取材レポート:金融・IT業界向け

2025.12.12

【グッドウェイ、セミナーインフォ】金融 IT EXPO 2025開催~生成AI時代の システムモダナイゼーションと サイバーセキュリティ対策~【後編】

2025年12月5日(金)、株式会社グッドウェイと株式会社セミナーインフォは「金融 IT EXPO 2025 ~生成AI時代の システムモダナイゼーションとサイバーセキュリティ対策~」を共同で開催。
金融業界の喫緊の課題と未来の方向性を示すための議論の場を提供しました。

本レポートでは、講演の一部を抜粋してご紹介します。

前編中編はこちら

なお、全ての講演内容はアーカイブ配信にてご視聴いただけます。
【視聴無料】お申し込みはこちら ※視聴期限:2025年12月19日(金)まで
講演 ブラックボックス化したIT資産に生成AIで挑む
― 横浜銀行×Trust TLanP の取り組み ―
登壇者:
吉田 稔 氏(株式会社横浜銀行 ITソリューション部 データマネジメントG グループ長)
勝本 秀之 氏(Trust株式会社 執行役員CPO Principal Solution Lead(生成AI X レガシー担当))
本講演では、「2025年の崖」の危機にある金融業界の課題として、レガシーシステムのブラックボックス化と技術者不足が、DX推進の主要な阻害要因となっていることを示しました。
レガシーの現状とドキュメント未作成の課題
横浜銀行は、手作業によるデータ加工(Excelバケツリレー)を解消するためマーケティングクラウド(共同MC)を推進し、作業工数を約82.5%削減した。しかし、担当者が「設計書作成を忌避」した結果、ノウハウが暗黙知化するという新たな課題に直面した。
TLanPによる可視化と解決策
この課題に対し、横浜銀行はTrust社のソリューション「TLanP」を活用したPOC(概念実証)を実施した。
・自動生成:レガシーコードや共同MCの設定を入力とし、生成AIが自動的にデータ処理フロー図(設計書相当)を生成し、処理内容を可視化。
・効果:これにより、設計書作成工数を削減しつつ、引継ぎやレビューの効率化を実現。
・ハルシネーション対策:生成AI特有のハルシネーションリスクに対し、処理対象のプログラム規模を適正化し、メタデータを事前に整備することで精度を安定させられることを実証。
EUC領域への適用拡大とモダナイゼーション戦略
今後は、基幹システムだけでなく、ExcelマクロやAccessなどのEUC(エンドユーザーコンピューティング)ツールに対しても設計書の自動生成を展開し、管理可能な状態にする必要がある。
AIを用いて、ソースコード内にしかない最新の仕様を構造化・文書化することで、ブラックボックス化したIT資産を「判断できる状態」にし、金融システム全体のモダナイゼーションを推進することが不可欠だ。

 

講演 金融サービスにおけるAI主導のトランスフォーメーション
登壇者:イクバル サダム 氏(Quantexa Japan株式会社 金融犯罪対策専門家)

 

本講演では、AI市場が2030年までに世界GDPに年間最大4.4兆ドルの貢献をもたらすと予測される一方で、現状ではAIプロジェクトの約80%が失敗している背景を分析しました。
AI導入の最大の障壁
AI導入の最大の障壁は「データアクセスと管理」にある。
データは存在するものの、個別のプラットフォームにサイロ化して存在しており、統合や接続がなされていないため、AIが正確なインサイトを導き出すための「コンテキスト(文脈)」が欠如している点が根本的な問題である。
意思決定者の約22%しか組織内のデータの可用性を信頼しておらず、顧客レコードの9件に1件が重複しているなど、データ信頼性の欠如も課題だ。
コンテクスチュアル・インテリジェンスの導入
断片化したデータを単に保存・分析するのではなく、「つなげる」ことでコンテキストを持たせるアプローチが提案された。
・信頼性の高いデータレイヤー:既存のプラットフォーム上に、内部データ(KYC、取引履歴)と外部データ(企業登記等)を統合する「信頼性の高いデータレイヤー」を構築する。
・多目的利用:このデータ基盤を、KYCアナリスト、リレーションシップマネージャー(RM)、コンプライアンスなどの異なる部門が共有・活用できる設計とする。この統合的な全体像(360度ビュー)を構築することが、正確な意思決定のための基盤となる。
今後の展望と提言:データの運用化(Data Operationalization)
AIの力を最大限に引き出すためには、統合されたデータにコンテキストを組み込み、組織全体でアクセス可能にすることが不可欠である。
Tier 1グローバル銀行の事例では、データ統合によりRMの顧客対応時間が数日から数時間に短縮され、初年度で約2億ドルの収益増加が実現した。
この基盤を通じて、業務プロセス全体を高度化し、迅速かつ信頼性の高い意思決定を実現する「データの運用化(Data Operationalization)」を組織全体で推進すべきである。

 

特別パネルディスカッション 経済産業省レポートが示す2025年の崖と金融モダナイゼーション powered by FITA
<パネラー>
木村 紘太郎 氏(経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 AI産業戦略室 室長補佐)
大津 州平 氏(みずほ信託銀行株式会社 IT・システム企画部 部長)
多木 嘉一 氏(三菱UFJ信託銀行株式会社 デジタル戦略部 執行役員 デジタル戦略部長)
<モデレーター>
湯山 敬太 氏(金融IT協会(FITA) モダナイゼーション委員長代行&検定WG委員)

経産省レポートが示す「崖」と構造的課題
[湯山氏] 本日は、経産省のレポートを踏まえ、レガシーモダナイゼーションの戦略と課題について、信託銀行のIT部門トップから熱く語っていただきます。
[木村氏]私はSIerからの出向で、開発の苦しみがわかる公務員です。「2025年の崖」は目前ですが、DXの本質はデジタル技術とレガシー脱却を両輪で進めることです。我々のレポートでは、レガシーシステムを「3+2」で定義しています。技術面の老朽化、肥大化、ブラックボックス化に加え、経営面ではIT投資の不足と古い組織文化が問題です。
金融機関の戦略転換:人とAI Readiness
[多木氏] 弊社は、システムのレジリエンス確保を重視し、「断捨離」とモダナイゼーションを並行しています。AI活用の前提として、サイロ化システムを整理する「AI Readiness(AIが働ける環境整備)」が不可欠だと認識しています。トップのコミットメントを行内全体に浸透させるため、各階層に向けた「DXコミュニケーション」を継続し、改革への納得感を醸成しています。
[大津氏] 我々も、40年来のメインフレームを15年かけて撤廃する長期プロジェクトを遂行中です。古い言語や属人化の問題は深刻ですが、これからは「タコが自分の足食ってるような状態」から脱却しなければなりません。IT人材の高齢化を防ぐため、事務部門などへのローテーションを通じて「CIO級人材」を育成する戦略を掲げています。
モダナイゼーションは「人のアップデート」
[木村氏] DXはBPR(業務プロセスの変革)が必須です。今後は、人海戦術が必要だった現状分析に、生成AIやAIエージェントを使い、意思決定や抽象的な企画段階にまでしっかりとAIを活用することが重要です。これは「可視化を本気でやれ」という提言に他なりません。自社のIT資産を解体し、つまびらかにしてほしいです。
[多木氏] 金融サービスの究極的な価値は「安心、安全、信頼」です。オンプレかクラウドかといった二者択一ではなく、レガシーと新しい技術の調和をアーキテクトの思考で考えていくことが、レガシー全体を捉えるポイントです。
[大津氏] モダナイズやサイバーの費用はかかりますが、自分たちで再設計することが大切です。金融のビジネスはITそのものなので、「一層ビジネスの真ん中にITを」という意識を持ち、ビジネス起点でテクノロジーを見極めて使いこなすことが、社会の持続的な成長に貢献することにつながります。


講演終了後のネットワーキングでは、参加者同士による情報交換や活発な議論が交わされました。
また、マグロ解体ショーも行われ、迫力あるパフォーマンスに会場は大いににぎわいました。

 

【ブース出展社一覧】

(イルミオジャパン合同会社)

 

(株式会社インサイトテクノロジー)

 

(株式会社セゾンテクノロジー)

 

(AvePoint Japan株式会社)

 

(Quantexa Japan株式会社)

 

(Trust株式会社)

 

(株式会社マクニカ)

 

(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)

 

(一般社団法人金融データ活用推進協会/FDUA)

 

(特定非営利活動法人金融IT協会/FITA)

 


【視聴無料】アーカイブ配信のお申し込みはこちら ※視聴期限:2025年12月19日(金)まで

(取材、撮影、記事、編集・制作 :株式会社グッドウェイ )