取材レポート:金融・IT業界向け

2025.12.11

【グッドウェイ、セミナーインフォ】金融 IT EXPO 2025開催~生成AI時代の システムモダナイゼーションと サイバーセキュリティ対策~【中編】

2025年12月5日(金)、株式会社グッドウェイと株式会社セミナーインフォは「金融 IT EXPO 2025 ~生成AI時代の システムモダナイゼーションとサイバーセキュリティ対策~」を共同で開催。
金融業界の喫緊の課題と未来の方向性を示すための議論の場を提供しました。
本レポートでは、講演の一部を抜粋してご紹介します。

前編はこちら

なお、全ての講演内容はアーカイブ配信にてご視聴いただけます。
【視聴無料】お申し込みはこちら ※視聴期限:2025年12月19日(金)まで
特別対談 北國銀行&CCI グループの次世代システム戦略 powered by FITA
登壇者:
杖村 修司 氏(CCIグループ(旧 北國フィナンシャルホールディングス) 代表取締役社長)
山口 省蔵 氏(金融IT協会(FITA) 理事長)

 

システム部門を「戦略エンジン」に変えた北國の挑戦
[山口氏]本日は、CCIグループの杖村社長に、北國銀行がどのように大規模なシステム戦略を進め、金融とITを融合した事業持株会社へと変革したのか、その全貌をお伺いします。
[杖村氏] 私はシステム部門も経験しましたが、現在は「事業持株会社」としての意識で改革に取り組んでいます。この変革の結果、店舗数は25年前の154カ所から、次の2年で50カ所程度になる見込みです。以前はシステムやオペレーション部門をコストセンターと捉えていましたが、今は「戦略を支えるもの」へと180度転換しました。この変革の根幹には、スタッフへのリスキリング、そしてグループ名にも込めた「CCI(コミュニケーション、コラボレーション、イノベーション)」の理念があります。

 

コスト常識を破壊するAI活用とマルチクラウド戦略
[杖村氏] システム戦略の歴史として、アウトソースから内製化を経て、現在は勘定系をMicrosoft Azureへ移行し、さらにマルチクラウド(AzureとGoogle Cloud)構成への移行を進めているところです。大規模なパブリッククラウドでも障害リスクはゼロではないため、可用性の向上と「クラウドロックイン」の回避が目的です。勘定系刷新は通常300億~400億円かかると言われますが、我々はAIを開発に活用することで、コストと期間を大幅に圧縮しました。COBOLからJavaへの書き換えの99%をAIに担当させ、製造をわずか4ヶ月で完了できたことが、このコスト破壊の最大の要因です。

 

IBPと「ノンカスタマイズ」によるサービス再構築
[杖村氏] CRMや融資関連、インターネットバンキングなどを自前で開発し、パッケージから脱却したことが、店舗削減を実現できた最大の理由です。このシステムはIBP(統合ビジネスプラットフォーム)として、顧客起点でゼロから設計されており、事務人員の大幅な削減につながっています。さらに、我々は勘定系・サブシステムを含むシステム全体を、カスタマイズなし(ノンカスタマイズ)でそのまま使ってもらうモデルで他行へ外販し始めました。年間6億円からという低価格で提供可能ですが、導入行には業務フローや組織を変えるコーポレート・トランスフォーメーションを求めています。

 

トチカが示す次世代金融と組織文化のアップデート
[杖村氏] 我々は金融サービスそのものの変革も進めています。日本の法律に基づいた「預金型ステーブルコイン(トチカ)」に注力しており、預金が銀行外に流出せず、加盟店手数料を格段に安くできる(クレジットカードの約3%に対し、現在は0.5%)次世代の決済サービスとして展開しています。保守的だった地方銀行がここまでの変革を成し遂げた要因は、地道な「CCI(対話と協業)」による組織文化の変革に尽きます。我々が10~15年かけて成し遂げたことも、ITの時代となった今なら、他の組織でも3~5年でできると思います。
講演 AI活用のためのデータモダナイゼーション
レガシーシステムのデータを活かす実践方法
登壇者:
土方 大志 氏(セゾンテクノロジー データエンジニアリング統括部 統括部長)
瓦井 美由紀 氏(セゾンテクノロジー プロダクトセールスエンジニアリング部 プロダクトスペシャリスト)

 

本講演では、データ分析や生成AI市場の拡大に対し、基幹システム(レガシー)に蓄積された”本当に使いたいデータ”が活用できていない現状を指摘し、過去の事実を戦略的資産に変える「データモダナイゼーション」の重要性を論じました。

 

データ活用を阻む「レガシーの壁」
分析基盤が進化する一方で、データ供給源であるレガシーシステムとの間には「ネットワーク」「セキュリティ」「ガバナンス」といった「レガシーの壁」が存在し、DX推進の足かせとなっている。
現在直面する問題は、改修コストやCOBOLエンジニア不足に加え、データ抽出に手作業や申請が残り非効率である点だ。
また、EBCDICなどの特殊なフォーマット変換や、PDFなどの非構造化データをAIが理解できるようにする技術的な障壁も大きく、個別開発の負担を増大させている。
データ連携基盤による解決策と製品活用
データモダナイゼーション実現のためには、「抽出(リアルタイム化)」「変換(フォーマット吸収)」「品質(整合性チェック)」を連携基盤で一元化すべきである。
・HULFT 10:ファイル連携ツールとしてコンテナ対応やAPI連携を可能にし、レガシーとモダンをつなぐ。
・HULFT Square(iPaaS):クラウド型連携基盤としてノーコード開発で属人化を防ぐ。和暦・西暦変換や複雑なデータ加工(非構造化データの構造化)に対応し、技術的な差異を吸収する。
AI Readyなデータへ
AI活用には、AIが正しく理解できる「AI Ready」な品質のデータが不可欠だ。
レガシーとモダンの境界線は技術的な差異に過ぎず、統合プラットフォームを導入することで、データ連携における全てのハードル(インターフェース、文字コード、品質管理)を解決できる。
レガシー資産を安全かつ効率的に最新のAI・分析基盤へとつなぎ、データドリブンな経営を実現すべきである。
講演 【佐賀銀行 × AvePoint】経営課題
― DX推進 ― を妨げるポイントと解決する”コラボレーション”のヒントとは?
登壇者:
林田 浩明 氏(株式会社佐賀銀行 IT統括部 副部長兼サイバーセキュリティ対策室長)
坂手 義信 氏(AvePoint Japan 株式会社 VP, Head of Sales depertment)
本講演では、地方銀行のDX推進において、Microsoft 365などのコラボレーションツールの導入が、かえってガバナンスの欠如とIT部門の管理負荷増大を招き、DXの足かせとなっている現状を指摘しました。
DX推進を阻む「ガバナンスの欠如」
地方銀行にとって行内DXと地域企業支援を通じた新たな収益柱の構築は急務である一方、IT人材不足や組織のサイロ化がスピード感を阻害している。
コラボレーションツールの導入が進む中、チームの乱立や煩雑な権限管理、情報漏洩リスクといった「ガバナンスの欠如」を、解決すべき主要課題として提起した。
佐賀銀行の事例とガバナンスの自動化
佐賀銀行ではMicrosoft 365の試行開始後、自由利用により不要なチームが乱立し、統制が取れない状態に陥った。IT部門は申請対応で負荷が増大し、内製化や生産性向上が困難になっていた。
この課題に対し、同行はAvePointの「Cloud Governance」を導入することで解決を図った。
・ガバナンスの自動化:チーム作成やゲスト招待を申請・承認フロー化することで、統制とセルフサービスを両立させる。
・工数の大幅削減:利用されていないチームの棚卸しや期限管理を自動化し、IT部門の作業工数を従来の約5分の1に削減。
・内製化の実現:ベンダーに依存せず、行内メンバー主導で設定・導入を行い、約半年という短期間で全行展開を完了。
自動化によるスピードと内製化
DX推進においては、ツールを導入するだけでなく、運用管理の省力化とセキュリティ統制を「自動化」する仕組みが不可欠だ。
クラウドへのデータ集約が進む中、ランサムウェアやデータ消失リスクへの対応として、クラウドデータのバックアップソリューションの導入も検討されている。
佐賀銀行の事例が示すように、適切なソリューションを活用することで、外部ベンダーに依存しない「内製化」と「スピード感のある展開」が実現可能であり、これこそが経営課題を解決するコラボレーションの鍵である。
特別パネルディスカッション セキュリティ対策と生成AI活用 powered by FITA
<パネラー>
小倉 哲哉 氏(三菱UFJトラストシステム株式会社 取締役 兼 常務執行役員)
村瀬 雅裕 氏(株式会社大和総研 金融システム事業本部 常務取締役)
木下 博昭 氏(ニッセイ情報テクノロジー株式会社 執行役員)
<モデレーター>
岡田 拓郎 氏(金融データ活用推進協会(FDUA) 代表理事)

 

受発注から「戦略エンジン」への役割転換
[岡田氏] 生成AIの登場でITの位置づけとスピード感が劇的に変化しています。まず、システム子会社が親会社の戦略をどう支えるか、組織と人材について伺います。
[木下氏] 金融システム子会社の役割は、従来の「コスト最適化」から「DX推進・戦略の中核」へと変わっています。親会社に短期ローテーションなどの構造的課題があるため、子会社が高度なIT企画と知識継承を担う必要があります。
[村瀬氏] 従来の受発注関係ではスピードに対応できません。親会社内に社員が常駐し、その場で全て解決する「一体運営」、いわば「出島」形式こそが鍵です。
[小倉氏] 我々も「開発力強化」に取り組んでいますが、単なるスキル(質)だけでなく、ビジョン策定などを内発的に進め、エンゲージメント(組織カルチャー)を高めることが重要だと定義しています。
「内製化」の本質はコードではなく「意思決定」
[木下氏] 「内製化」の本質は、コードを書くことだけではありません。アーキテクチャ設計や要件定義などの「意思決定に関わる領域」を自ら担えるかどうかが重要です。現状はコンサル依存で知識が空洞化し、重要領域がブラックボックス化しているケースが多く、競争力として危うい状況だと感じています。
[小倉氏] IT投資意欲が高まっても、外部戦力を増やした結果、若手社員がモノづくりをせず進捗管理に時間を費やしているという問題が起きています。対策として、既存システムのドキュメント整備にAIを活用し、そのプロセス自体を若手のスキル向上(リスキリング)につなげようとしています。
[村瀬氏] 伝統的領域への投資が横ばいの中、今後は生成AIを使って、いかに少人数で効率的にレガシーシステムを維持・刷新していくかが重要になってきます。
システム会社は「戦略エンジン」となるべき
[小倉氏] モダナイゼーションの本質は、システムの刷新を通じて「人(組織)をアップデートする」という循環を回すことです。これはシステム会社にしかできないと思っています。
[村瀬氏] 今後は、非競争領域は我々システム会社が「プロダクトオーナー」となり、作ったシステムを金融機関がサービスとして利用する形が増えていくでしょう。
[木下氏] 金融システム会社は、金融事業の競争力そのものを生成する存在になっていくべきです。「技術的持続性の番人(ガーディアン)」として知識を守り、ビジネスとテクノロジーを結ぶ「戦略エンジン」としての役割を果たしていく、そういった気概を持って今後10年頑張りたいと思います。


【視聴無料】アーカイブ配信のお申し込みはこちら ※視聴期限:2025年12月19日(金)まで

(取材、撮影、記事、編集・制作 :株式会社グッドウェイ )