2025.07.17

【FinGATE(平和不動産)】FinGATE Campus 第20回「エンベデッドファイナンス市場展望2026~7兆ドル市場の成長機会~」を開催!

 

  2025年6月16日(月)、平和不動産は、東京・日本橋茅場町の金融インキュベーション施設「FinGATE KAYABA」にて、「FinGATE Campus 第20回」として、「エンベデッドファイナンス市場展望2026 ~7兆ドル市場の成長機会~」をテーマにセミナーを開催した。  FinGATEは、平和不動産が”金融とイノベーションの融合”を目指して設立したコミュニティであり、定期的にセミナーや勉強会、交流イベントを開催している。今回のセミナーでは、金融サービスの組み込み化(エンベデッドファイナンス)の現状と今後5年間の展望について、国内外の先進事例を交えながら、業界のトップランナーたちが熱い議論を交わした。


  セミナー冒頭では、総合司会(MC)の水津 朱美氏(FinGATE CLUB コミュニティマネージャー)が開会を宣言。続いて、主催者を代表して中島 優人氏(平和不動産)が挨拶に立ち、「記念すべき第20回の開催で満席となったことへの感謝」と「日本橋兜町でFinGATEが展開する金融系スタートアップ支援の取り組み」について説明。現在103社が集積し、オフィス提供だけでなく知見や出会いの共有を通じて成長を支援していることが紹介された。  本セミナーは、フィンテック養成コミュニティセブン銀行Fintech協会金融データ活用推進協会金融IT協会オルタナティブデータ推進協議会SARBLABGuardTech検討コミュニティなど、多数の団体からの協力のもと開催された。


  最初の講演では、伊藤 祐一郎氏(Finatextホールディングス 取締役CFO)が「現在地から読み解く次の5年」と題して登壇。2020年代を「エンベデッドファイナンスの10年」と位置づけ、著書「実践エンベデッドファイナンス」の内容を掻い摘みつつ、過去5年間の振り返りと今後の展望を詳細に解説した。  伊藤氏は、2000年代の「金融のオンライン化」、2010年代の「金融のモバイル化」を経て、2020年代は「金融の組み込み化」の時代に入ったと説明。顧客獲得単価の高騰を背景に、「お客さんを自分たちのところに連れてくるのではなく、お客さんがいるところに金融サービスを置いていく」という発想の転換が起きていることを強調した。特に注目すべきは、アメリカで発生した「BaaS問題」の詳細な分析だ。米Synapseの破綻事例を通じて、預金残高の照合不備により10万人のユーザーが資金を回収できなくなった問題を紹介。これを受けてアメリカでは規制が強化され、「ヘッドレスバンク」と呼ばれる新しいモデルが登場。日本のBaaSモデルが結果的に先進的であったことが明らかになった。

さらに、フィンテック企業の「リバンドル」トレンドについても言及。英国のMonzoやブラジルのNubankなど、単一サービスから始まった企業が複数の金融商品を提供することで収益を拡大している事例を紹介。今後5年間の展望として、「マス×少額」領域での激しい競争、「ニッチ×少額」領域でのバーティカルSaaSによる新規ビジネスの創出、そしてステーブルコインが新たなBaaSになる可能性を示唆した。


  休憩後に行われたパネルディスカッションでは、「エンベデッドファイナンス市場展望2026」をテーマに、モデレーターの藤井 達人氏(みずほフィナンシャルグループ デジタル企画部 執行役員)の進行のもと、伊藤氏に加えて、岡村 純一氏(Shopify Japan Senior Partner Solutions Engineer)、永吉 健一氏(みんなの銀行 取締役頭取)が登壇し、エンベデッドファイナンスの現在と未来について活発な議論が展開された。  永吉氏は、みんなの銀行がBaaSに特化した設計思想で構築されたデジタルバンクであることを説明。「銀行の強みであるライセンスホルダーとしての機能を最大限発揮できるよう、マイクロサービス化してAPIで提供する」という戦略を明らかにした。また、AI活用については「使わない企業は生き残れない」と断言し、業務効率化だけでなくクリエイティビティの向上にも活用していることを強調した。岡村氏は、ShopifyがAIに100%コミットしていることを紹介。「UX担当」という肩書きを廃止し、全社員がUXを考える体制に移行したことや、「Shopify Catalog」という新機能でAIが商品を発見しやすいインターフェースを構築していることを説明。さらに、USDCステーブルコインの導入背景について、「コマースの民主化」というミッションのもと、暗号通貨に眠る流通の可能性を引き出す狙いがあることを明かした。

パネルディスカッションでは、「銀行は黒子か、主役か?」という問いから始まり、AI時代における金融機関の存在意義、ステーブルコインの日本での活用可能性、決済以外のエンベデッド機能、toC向け与信サービスの今後など、参加者からのSlido経由の質問も交えながら、多角的な視点から議論が展開された。

特に印象的だったのは、AI時代における人材の役割についての議論だ。岡村氏は「マニュアル化できるタスクはAIに置き換わるが、複雑な依存関係や事業ドメイン知識が必要な部分は人間が担う」と指摘。永吉氏は「シニアほどAIを使うべき。問いの質が経験値によって大きく異なる」と述べ、伊藤氏は「言語化能力、特にMarkdown形式で綺麗に書く能力が重要になっている」と、それぞれの視点から人とAIの協働について見解を示した。


  クロージングでは、MCの水津氏より登壇者への謝辞とともに、アンケートへの協力依頼が行われた。続いて、阿部 一也氏(フィンテック養成コミュニティ)より、今後のイベント告知や、中国・インド視察ツアー案内などが紹介された。また、金子 雅佳氏(セブン銀行)からは、IVS2025 KYOTOでのサイドイベント開催についての案内があった。
最後に水津氏より「Lets Enjoy Fintech!」の掛け声とともに、オンライン参加者向けのプログラム終了が宣言され、会場参加者はネットワーキングへと移行した。
  プログラム終了後、会場後方でネットワーキングが実施され、西井 健二朗氏(セブン銀行 常務執行役員、Fintech協会 理事)の乾杯の音頭で交流がスタート。登壇者と参加者が軽食とドリンクが提供される中、参加者同士での活発な意見交換が行われた。特に、ステーブルコインの具体的な活用アイデアやBaaSビジネスの可能性について、実務者レベルでの深い議論が交わされた。