2025.09.26
【三菱UFJ信託銀行】デジタル変革の最前線から【第1弾】AIによるデューデリジェンス業務の効率性・堅確性向上~ネガティブニュースチェックツール「NEWS AI SEARCHER」のご紹介~
三菱UFJ信託銀行の市場部門では、急速に進展するデジタル化の環境の中、投資意思決定の高度化と定例的業務の効率化を目指し、ユーザー起点でのデジタル案件推進に注力。単なる社内業務の生産性向上にとどまらず、実際に対外的なサービス・ノウハウの提供に至る事例も生まれている。
今回から2回にわたり、同部門における先進的なデジタル施策の実例をご紹介する。
今回から2回にわたり、同部門における先進的なデジタル施策の実例をご紹介する。
第1弾となる本記事では、AIを活用したネガティブニュースチェックツール「NEWS AI SEARCHER」を取り上げ、その革新的なアプローチと実用性について詳しく見ていく。
第2弾では、ビッグデータ・クラウド活用によるオルタナティブ資産のモニタリングシステムや、生成AIチャットボットの活用事例等を通じて、同部門のデジタル戦略全体の概要をお伝えする予定だ。
第2弾では、ビッグデータ・クラウド活用によるオルタナティブ資産のモニタリングシステムや、生成AIチャットボットの活用事例等を通じて、同部門のデジタル戦略全体の概要をお伝えする予定だ。
| デューデリジェンスの重要性について |
地政学リスクの高まりや各国の法規制厳格化を背景に、企業におけるデューデリジェンスの重要性が急速に増している。特に金融機関では、AML(マネー・ローンダリング対策)やCFT(テロ資金供与対策)、さらには経済安全保障の観点から、より高度で継続的なリスク管理が求められている。
こうした中、注目を集めているのがAIを活用したネガティブニュースチェックだ。三菱UFJ信託銀行では、独自開発した「NEWS AI SEARCHER」により、従来の6倍の効率性を実現しながら、より確実なリスク管理を可能にしている。
今回は、同行で「NEWS AI SEARCHER」のプロジェクトに携わる3名の担当者に、AIを活用したネガティブニュースチェックの実際と、その革新的なアプローチについて話を伺った。
| 橋本 |
昨今の地政学リスクの高まりや各国の法規制の厳格化を背景に、デューデリジェンスの重要性が急速に増していますよね。
デューデリジェンスは、様々なリスクから自社を守る基本的かつ重要な手段だと感じています。
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| 堀川 | そうですね。特にグローバル展開を進める企業にとって、地政学リスクに加え、異なる法規制や文化、ビジネス慣行への対応が不可欠です。事前のリスク把握やリスク動向のモニタリングを通じて、適切な対応策を講じることが求められています。 |
| 小林 | さらに、CSRやESGの観点からも、企業の社会的責任を果たすためにデューデリジェンスは欠かせません。サプライチェーンの透明性や持続可能性の評価は、今や企業価値に直結する要素となっています。 |
| 日進月歩で進化するデューデリジェンスプロセス |
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橋本 | 私が実務としてコンプライアンス業務に携わってきた過去10年の間でも、デューデリジェンスのプロセスは日進月歩で高度化・複雑化してきました。
特にAML(マネーロンダリング対策)やCFT(テロ資金供与対策)の分野では、顧客や取引先のデューデリジェンスが喫緊の課題です。最近では経済安全保障の観点も加わり、事業法人においても取引先や委託先のデューデリジェンスの重要性が一層高まっています。 |
| 堀川 | より強固な対策を求められてきた金融機関では、画一的な手法がない中、各行が手探りでリスク低減策を模索してきました。現在はリスクベースアプローチを取り入れ、リスクの高低に応じて調査の深度を変えることが一般的になっていますね。 | |
| 小林 | 継続的な顧客デューデリジェンスも重要です。リスクレベルに応じて、高リスクの場合は毎年、低リスクの場合は2~3年ごとに実施するなど、柔軟な対応が求められています。 |
| デューデリジェンスにおけるネガティブニュースの活用 |
| 小林 | 最近では、デューデリジェンスの一環として、ネガティブニュースの活用が注目されていますね。金融庁のガイドライン(※)でも、リスク低減措置として、顧客に関する不芳情報(ネガティブ・ニュース)の取得と評価が推奨されています。 ※マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)P38(令和6年4月1日)
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| 堀川 | そうですね。2024年の経済安全保障推進法の施行により、経済安全保障の観点からも、取引先や委託先のリスク管理をより厳格に行うことが求められるようになりました。 デューデリジェンスの一環として、過去のネガティブ情報を確認することは、非常に有効な手段だと思います。 |
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| 橋本 | 海外では、ネガティブニュースチェックは「アドバースメディアスクリーニング」として、一般的なリスク管理手法として広く導入されていますね。 日本においても、ニュースデータの分析は今後さらに多くのビジネスシーンで活用され、リスクの早期発見や対応の迅速化に繋がる重要な手段となるでしょう。 |
| 三菱UFJ信託銀行におけるNEWS AI SEARCHERの開発 |

| 小林 |
当社では、ネガティブニュースを確認する際に、従来のキーワード検索のみでは限界があると感じていました。
従来のキーワード検索では大量の関係のないニュースがヒットし、効率性に限界がありました。 そこで開発したのが、AIを活用した「NEWS AI SEARCHER」です。 |
| 橋本 |
このツールは、自然言語処理技術を使って、ニュースを重要度に応じてA・B・Cの3段階に分類します。
Aは最も重要な情報、Bは注意が必要な情報、Cはそれ以外として分類し、重要度に応じて内容精査に軽重をつけることで、確認作業全体の大幅な効率化を実現しています。
AIモデルは、知見のある担当者が約3千件のニュースを人手でラベリングし、AIに学習させて構築しました。 |
| 堀川 |
しかも、業務担当者がラベルの正否をチェックし、再学習させることで、モデルの精度も継続的に向上しています。
HITL(Human In The Loop)の仕組みも取り入れており、最終的な判断は人間が行うという点も安心ですね。
使えば使うほどユーザーのニーズに合わせてカスタマイズされ、例えば熟練担当者の交代時にもモデルがガイド役を果たしてくれます。ナレッジの承継にも寄与しており、暗黙知の形式知化を実現できていると言えます。
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| NEWS AI SEARCHERが提案する全く新しいプロセス |

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堀川 |
現在、当部門では約500件の対象先をNEWS AI SEARCHERで日々モニタリングしています。
新規取引時の確認は当然ですが、継続的顧客管理として日々、全ての取引先のネガティブニュースを確認しています。
これを人手で行った場合、試算によれば6名分の工数が必要ですが、実際には1名で対応できています。 通常業務に組み込み、担当者が毎日決まった時間にニュースを確認し、短時間で効率的かつ確実なチェックを実現しています。
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| 小林 |
重大なネガティブニュースが検知された場合には、即座にデューデリジェンスの見直しや取引の継続可否の判断に繋げています。
ニュースベンダーは、大手3社と契約締結しており、欧米系、日系のニュースをカバーしています。特に、海外市場や国際情勢に対する情報感度を、これまで以上に高めることが不可欠となっている現状においては、このツールの網羅性は非常に有効です。英語ニュースについては翻訳サービスと連携し、日本語への高精度なリアルタイム翻訳も実現しており、ユーザーから高い評価をいただいています。
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| 橋本 |
全取引先のネガティブニュースを毎日チェックするという業務は、まさに「NEWS AI SEARCHER」だから実現できる、全く新しいプロセスでもあります。
その使い勝手の良さから、昨年より当社内のみならず、他社様やグループ企業への展開を開始しています。
私たちが先行して取り組むことで、他の金融機関や事業会社にも展開し、安心・安全な社会の実現に貢献したいと考えています。 |
| お問合わせ |
三菱UFJ信託銀行 市場デジタル推進部
cpldxsales_post@tr.mufg.jp
| 紹介動画 |









